2022年10月16日日曜日

伊吹山



 

北西の風に煽られて湖北方面から吹き上がる水分、
これがこの山の頂で真っ白な雲になります。


濃尾平野に暮らす方なら、
冬の寒い時期の早朝、この山から吹き降りる冷たい風は「伊吹おろし」に、
暖かい寝床から抜け出すのに気合が要ること、
身に覚えがあるのではないでしょうか?

晩秋にはまだ早いこの季節、
山の頂を抜ける風、
それは未だ心地いいものでした。


9号目の駐車場で少し早めの昼食を頂き、
ここから頂上を目指して歩きます。

駐車場から頂上までは3つのルートが。

本日はイン・ドア派の家内も一緒、
なだらかな登りが続く西登山道コースを選択です。
「家から持ってきたほうじ茶、もうボトルが空だわ。
 きっとのどが渇くから、何か飲み物を買わなきゃ。」

昼食で暖かいお蕎麦を食べた家内です、
そのお味が若干で塩辛かったせいなのか、
駐車場近辺の散策で既にお茶を飲み干して。

「え?お水が210円もするの??」

人里離れた観光地でのあるあるは、何事も下界よりお値段は高め。

トイレの紙も据え付けが無く、
ティッシュを自販機で買う様態に、
しゃがんで事を為す前に気が付いて、危うくも危機を回避されたそうです。

・・・皆さま、登山前のご準備はご用心の程を。


さあ、その準備も万端、これから頂上へ。

登山道は良く整備されていて、登り始めはとても歩きやすい登坂です。


遠くに見えるは出発した9号目の駐車場、
相変わらず、北西側は湖北方面からガスが上がり、
それ自体はヒンヤリと心地いいのですが、まま眺望・視界を遮ります。

そんな中、少しずつですが、足元が悪くなってきて・・・

いえ、
渓流・渓谷を通い慣れた小生には問題ない岩場も、
イン・ドア派のお方には、尖った岩肌の登り歩行、難儀なようです。

不慣れもあり、恥も外聞もなく、
大股でガッガッガッと踏ん張りながら歩く家内、それは疲れます。

もう少し小股・歩幅を短くして登る様、アドバイスするのですが・・・



距離は1kmほどと、さして長くはない山頂までの道のりです。

それでも休み休み・・・
ようやく山頂が見えて来ました。


こう、何と申しましょうか、

この山から吹き降りる、冬の厳しくも強い風から、
何もない、荒れ野原な頂をイメージしていたのですが・・・

正直、少し期待外れです。


湖北方面から湧き上がるガス・雲も、
この山を越えて濃尾平野方面へ抜ける際には透明に。

その加減でしょう、南東側の眼下には、濃尾平野がくっきりと。


やってきました、伊吹山の山頂はその公式の頂、三角点まで。

意外の他、山頂はなだらかな丘陵状態、
その丘に沿って、ぐるりと一回りできる遊歩道が。

のんびりと山頂を一周します。


見晴らしの利いた南東側・濃尾平野方面に比べて、
やっぱり北西側・湖北方面は雲で視界が宜しく無くて。

真冬の乾いた冷たい「伊吹おろし」の発生サイクル、
それは今の季節でも垣間見ることが叶います。




山頂は丘陵部での一休み。

久しぶりの野外活動で汗をかいたのでしょう、
イン・ドア派の家内は下で買ったペットのお水、
既に底を尽きかけ、ソフトクリームに手が伸びます。

小生も、抜ける風を感じながら、頂きます。


最近は「山ガール」なる言葉がありますが、
若い女の子の登山者・グループがあちらこちらに。

数人組の女子サークル、のんびり、岩に腰かけて。
趣味の悪いオジサンは、こっそり、聞き耳を立て。
・・・聞こえてくるは、女子会のそれ、恋路話。


行きの登坂でかいた汗も、山頂での散策・休憩で乾いてしまいました。

さあ、これから駐車場に向け下山です。


上り坂は体力的に辛いものなのですが、
下り坂は体力的には楽なもの、
されど二足歩行の構造上、前のめりは滑り・転倒に要注意。

・・・家内もこの辺り、良くご存知です。


斯様な文明の利器もあるのですが、
残念、これは荷物用で人の乗車はご法度です。


ゆっくりと、行きに登った西登山道コースを下ります。

写真を見ると、何だか登っている感じですが、
それは背景の白い雲が織りなす錯覚、
これ、下りの途中なんです。

時刻は日が傾く時分、
気温が下がりつつあるからか、
北側からのガス濃度は行きよりも濃い目。

下りで岩場は足元も悪く、
イン・ドア派の家内の歩行速度、それは極端に遅くなります。

豪胆・沈着で、釣り師の素養、それは小生以上の家内ではありますが、
流石にこの状況は周囲の皆様にご迷惑、そう思われたのでしょう。

後ろに閊える方々に先に行ってもらうため、
我ら夫婦は登山道の脇にて待機します。

ご同年のご夫婦が我らよりお先に。
追い抜かれざまに、小生がご挨拶にとお声がけを。

「恐縮です、不器用な人生を歩んでおりまして・・・」

このセリフ、
なぜか先方は旦那様のツボにハマったご様子、クスっとお笑いになられます。

斯様な追い越されを幾度か。

それでも我が家内、
大きくはコケることもなく、お得意の踏ん張りを利かせて。

行きの登りより時間を掛け、ようやくにも我ら夫婦、駐車場まで下山です。


家内には、よほど下山が大変だったのでしょう。
良く飲み、そして、良く食べる・・・健康である証、結構な事です。

小生もお付き合いで、美味しい五平餅を頂きます。


帰路、ドライブウエイの途中は、名も無いカーブの路側帯から。

山頂は先ほど以上に曇に覆われる伊吹山。

そこから吹き下ろされる空風の季節、それは今少し先のことです。