北西の風に煽られて湖北方面から吹き上がる水分、
これがこの山の頂で真っ白な雲になります。
濃尾平野に暮らす方なら、
冬の寒い時期の早朝、この山から吹き降りる冷たい風は「伊吹おろし」に、
暖かい寝床から抜け出すのに気合が要ること、
身に覚えがあるのではないでしょうか?
晩秋にはまだ早いこの季節、
山の頂を抜ける風、
それは未だ心地いいものでした。
9号目の駐車場で少し早めの昼食を頂き、
ここから頂上を目指して歩きます。
駐車場から頂上までは3つのルートが。
本日はイン・ドア派の家内も一緒、
なだらかな登りが続く西登山道コースを選択です。
「家から持ってきたほうじ茶、もうボトルが空だわ。
きっとのどが渇くから、何か飲み物を買わなきゃ。」
昼食で暖かいお蕎麦を食べた家内です、
そのお味が若干で塩辛かったせいなのか、
駐車場近辺の散策で既にお茶を飲み干して。
「え?お水が210円もするの??」
人里離れた観光地でのあるあるは、何事も下界よりお値段は高め。
トイレの紙も据え付けが無く、
ティッシュを自販機で買う様態に、
しゃがんで事を為す前に気が付いて、危うくも危機を回避されたそうです。
・・・皆さま、登山前のご準備はご用心の程を。
さあ、その準備も万端、これから頂上へ。
登山道は良く整備されていて、登り始めはとても歩きやすい登坂です。
遠くに見えるは出発した9号目の駐車場、
相変わらず、北西側は湖北方面からガスが上がり、
それ自体はヒンヤリと心地いいのですが、まま眺望・視界を遮ります。
そんな中、少しずつですが、足元が悪くなってきて・・・
いえ、
渓流・渓谷を通い慣れた小生には問題ない岩場も、
イン・ドア派のお方には、尖った岩肌の登り歩行、難儀なようです。
不慣れもあり、恥も外聞もなく、
大股でガッガッガッと踏ん張りながら歩く家内、それは疲れます。
もう少し小股・歩幅を短くして登る様、アドバイスするのですが・・・
距離は1kmほどと、さして長くはない山頂までの道のりです。
それでも休み休み・・・
ようやく山頂が見えて来ました。
こう、何と申しましょうか、
この山から吹き降りる、冬の厳しくも強い風から、
何もない、荒れ野原な頂をイメージしていたのですが・・・
正直、少し期待外れです。
この山を越えて濃尾平野方面へ抜ける際には透明に。
その加減でしょう、南東側の眼下には、濃尾平野がくっきりと。
やってきました、伊吹山の山頂はその公式の頂、三角点まで。
意外の他、山頂はなだらかな丘陵状態、
その丘に沿って、ぐるりと一回りできる遊歩道が。
のんびりと山頂を一周します。
見晴らしの利いた南東側・濃尾平野方面に比べて、
やっぱり北西側・湖北方面は雲で視界が宜しく無くて。
真冬の乾いた冷たい「伊吹おろし」の発生サイクル、
それは今の季節でも垣間見ることが叶います。
山頂は丘陵部での一休み。
久しぶりの野外活動で汗をかいたのでしょう、
イン・ドア派の家内は下で買ったペットのお水、
既に底を尽きかけ、ソフトクリームに手が伸びます。
小生も、抜ける風を感じながら、頂きます。
最近は「山ガール」なる言葉がありますが、
若い女の子の登山者・グループがあちらこちらに。
数人組の女子サークル、のんびり、岩に腰かけて。
趣味の悪いオジサンは、こっそり、聞き耳を立て。
・・・聞こえてくるは、女子会のそれ、恋路話。
行きの登坂でかいた汗も、山頂での散策・休憩で乾いてしまいました。
さあ、これから駐車場に向け下山です。
上り坂は体力的に辛いものなのですが、
下り坂は体力的には楽なもの、
されど二足歩行の構造上、前のめりは滑り・転倒に要注意。
・・・家内もこの辺り、良くご存知です。
斯様な文明の利器もあるのですが、
残念、これは荷物用で人の乗車はご法度です。
ゆっくりと、行きに登った西登山道コースを下ります。
写真を見ると、何だか登っている感じですが、
それは背景の白い雲が織りなす錯覚、
これ、下りの途中なんです。
時刻は日が傾く時分、
気温が下がりつつあるからか、
北側からのガス濃度は行きよりも濃い目。
下りで岩場は足元も悪く、
イン・ドア派の家内の歩行速度、それは極端に遅くなります。
豪胆・沈着で、釣り師の素養、それは小生以上の家内ではありますが、
流石にこの状況は周囲の皆様にご迷惑、そう思われたのでしょう。
後ろに閊える方々に先に行ってもらうため、
我ら夫婦は登山道の脇にて待機します。
ご同年のご夫婦が我らよりお先に。
追い抜かれざまに、小生がご挨拶にとお声がけを。
「恐縮です、不器用な人生を歩んでおりまして・・・」
このセリフ、
なぜか先方は旦那様のツボにハマったご様子、クスっとお笑いになられます。
斯様な追い越されを幾度か。
それでも我が家内、
大きくはコケることもなく、お得意の踏ん張りを利かせて。
行きの登りより時間を掛け、ようやくにも我ら夫婦、駐車場まで下山です。
家内には、よほど下山が大変だったのでしょう。
良く飲み、そして、良く食べる・・・健康である証、結構な事です。
小生もお付き合いで、美味しい五平餅を頂きます。
帰路、ドライブウエイの途中は、名も無いカーブの路側帯から。
山頂は先ほど以上に曇に覆われる伊吹山。
そこから吹き下ろされる空風の季節、それは今少し先のことです。